2015年10月20日火曜日

今夜、すべてのバーで

バナナの皮で滑って転んでいる男と、それを見て笑っている男が、同時におれの中にいるのだ。苦痛に対する耐性を得るために、無意識のうちに自分をふたつに裂いたのかもしれない。
この二つの存在は互いを毛嫌いしているが、唯一、泥酔の中にあってだけ重なり合ってひとつのものになった。この二つが溶解し合ったときにだけ、そこからほんものの怒りや悲しみがたちのぼってくるのだった。泥酔していないときのおれは、苦笑いだけが得意な、いわば感情喪失症者だった。 

2015年10月10日土曜日

今夜、すべてのバーで

無賃乗車で夜のいずこかへ運び去られていく、タクシーの窓から、おれは夜の空気の中にかすかな香り、自由の香りを嗅いだような気がした。