2009年11月30日月曜日

嫌われ松子の一生

カチッ。何かのスイッチが入ったような音が頭の奥で聞こえた。ロッドを巻く真似をしてみた。シザーを操る真似をして見た。ピンパーマ。ストロークカット。レイヤーをつけ、最後はフィンガーブロー。手を使い、思いつく限りの技術を再現していく。夢中になった。指がよろこんでいた。この十数年間、滞っていた血流が、ふたたび動き始める。意識が鮮明になってくる。封印され、埃を被っていた財産が、小躍りしながら飛び出てくる。できる。憶えている。我に返ると二時間が過ぎていた。

2009年11月25日水曜日

ゲルマニウムの夜―王国記

僕が宇川君を疎ましく思うことは、ときどき独り言をするような調子で口笛を吹くことだ。その音色が幸福そうで、得意そうなことに耐えられない。身の程知らずの小悧巧が小賢しさという音程を用いて口笛を吹き鳴らしているというところだろうか。とにかくそんな小さなことがひどく癇に障るのだ。

2009年11月20日金曜日

ゲルマニウムの夜―王国記

自然食好きの有機野菜好きにこの寄生虫の卵の充ちみちた糞の海を泳がせてやりたい。僕の最も嫌いなものは、選別にすぎないくせにそこに自然保護という名を冠して小市民の自尊心を擽る西欧白人型の新たな植民地主義だ。もっとも、このような小賢しい言葉を脳裏に並べて思考したような気になったあとは、必ず憂鬱な自己嫌悪が這い上がってくる。

2009年11月15日日曜日

ゲルマニウムの夜―王国記

単純に割り切れる涙ではないことがわかりきっているのに、よろこびといった一方向にむいた鋳型に当てはめようとするのは、単純な悪意の中でも最悪なものだろうと考え直したからだ。

2009年11月10日火曜日

ゲルマニウムの夜―王国記

僕はリヤカーを農場まで引っぱるしかないのだ。エネルギーの割り振りの問題だが、脳髄にエネルギーを集中させるとろくなことがない。妄想が飛翔して収拾がつかなくなるばかりだ。しかも僕の場合、妄想がとことん下卑ていて文学的でないのが悲しいし、居たたまれない。僕は脳を頭蓋の中から抜きだして、このぬかるんだ赤土とまぜこぜにしてしまいたい。栄養は筋肉で消費するべきだ。

ゲルマニウムの夜―王国記

僕はリヤカーを農場まで引っぱるしかないのだ。エネルギーの割り振りの問題だが、脳髄にエネルギーを集中させるとろくなことがない。妄想が飛翔して収拾がつかなくなるばかりだ。しかも僕の場合、妄想がとことん下卑ていて文学的でないのが悲しいし、居たたまれない。僕は脳を頭蓋の中から抜きだして、このぬかるんだ赤土とまぜこぜにしてしまいたい。栄養は筋肉で消費するべきだ。

2009年11月5日木曜日

コインロッカー・ベイビーズ

案外大事なのは僕が煉瓦であの男の尖った頭を叩き潰したことだ、ときには、僕を忠実に愛しているものの頭を叩き割ることが必要だ、何のために?自分の欲求と出会うためにだ。

2009年11月1日日曜日

コインロッカー・ベイビーズ

自分が最も欲しいものは何かわかっていない奴は、欲しいものを手に入れることが絶対にできない、キクはいつもそう考えている。